女性のためのバリューブログ

感情労働と保育士の働き方について

2015.5.1
日経新聞の社説に、福祉サービスと感情労働についての記事があり、他の業界と比較して精神的負担がかかるにもの関わらず、他の業界よりも金銭的対価が低いことが問題だといった趣旨でした。
改めて感情労働とはどういったものかを理解した上で、感情労働が抱える問題に対して、我々がどういったことが出来るのかを考えてみました。

感情労働とは

・自分の感情を押し殺したまま、職務を全うすることが当然のように求められており、「人」との円滑なコミュニケーションを図ることが大切な接客業、医療、福祉、教育など、ヒューマンサービスに関わる仕事がこれにあてはまる。
・職業には、その職務にふさわしい態度や行動があり、それから逸脱すれば、「あるまじき態度」として非難される。
・感情労働につく人は精神的に消耗しやすい。とくに、使命感がとても強く、ひたむきな気持ちで仕事をしている人ほど、突然ポキッと心が折れてしまうような虚無感に襲われることがある。=「バーンアウト」(燃えつき症候群)。
・バーンアウトに陥ると、突然仕事にやりがいを見いだせなくなり、人が変わったように冷淡な対応をするようになる。

「こうあらねばらない」という責任感の強い人ほど、バーンアウトするリスクを抱えている。

保育士の感情労働

時代の移り変わりとともに、保育園、保育士に求められるニーズやあるべき姿
というものも変わってきているようですね。

・ある調査結果によると、保育士の感情演技(本当の気持ちを抑えて教育をする)について、年層、雇用形態で違いがあることが判明。
…40代が20代・50代を抜いて最も多く、非正規雇用社員より正職員の方が多い。
→管理者・責任感のある役職に就く人が多い世代だからだろうか?
ちょうど40代のベテランの方々は、保護者対応、後輩指導、園管理など、上司と部下の間に挟まれる存在ですもんね。

・90年以降、乳児保育の拡充、延長保育、障害児保育など、子どもに対する保育のみならず、保護者への助言・サポートなどまで期待されるようになった。
保育ニーズの多様化により、保育の専門性・質が重要視されるようになっている。

・保育士に求められる資質とは?・・・明るく・元気な・優しい・子どもに求められる/頼られる教育者など
これらの資質というのは技術面の部分より雰囲気や感情といったものになります。
するとどのようなことが起きるでしょう。
→感情の抑制/制御、子どもにとって模範となる姿の演出をするようになる
→個々の個性を活かした教育というより、学習や訓練によって習得可能な保育士スキルばかりを身につける
=皆均一、ムラのない保育

★良い意味でも悪い意味でも、自分を育ててくれる保育士さんが皆同じだったらどうでしょう?
個性のない全く同じ子どもたちが育ってしまうでしょうね。
そしてそうやって育った子どもたちもまた、将来同じような教育をしていくことでしょう。
保育士を「子どもを支え育てていく存在」と位置付けるのと同時に、
「自分自身の成長や専門性の向上、保育実践の改善を試みる学び手」
と位置づけて考える必要性がありそうですね。


感情労働は別に悪い側面ばかりではありませんが、悪い側面が大きくならないようにするために、大きく2つ必要だと思います。

1.感情労働就業者に対しての教育

2.精神的負担に対して見合った対価

ただし、2の対価については、今の保育業界ではあまり現実的ではありません。それが出来るなら、そもそも保育士を集めるために多くの法人が保育士の給与を上げています。

では1をどのように考えるのか、です。

感情労働とうまく付き合う

先で書きました通り、感情労働は悪いことばかりではありません。
調べた限りでは以下のような考え方や取り組みが必要のようです。

感情労働はやりがいのある仕事

労働者にとって必ずしも否定的な影響(バーンアウトや就労ストレス)のみを与えるわけではなく、肯定的な影響を与える場合もある。(モチベーションの向上等)
→洗練された笑顔は人を幸せな気持ちにさせるし、真摯な対応は受け手を安心させ、生きる力を与えることができる。
・仕事にやりがいを持つ人のなかには、仕事と個人を分けて考えることができず、仕事にのめり込んでいく人が少なくない。当面はやりがいと使命感で高揚し、仕事に邁進できても、休みなくその状態を続けると、心のエネルギーが失われ、燃えつきてしまう。
★感情労働につく人は仕事にかける思いと同じくらい、仕事に打ち込む時間や気持ちの込め方に制限をかけることも意識し、オンとオフのメリハリをつける必要がある。
→「ここまでは頑張るけれど、ここから先はできない」という限界を知っておく。等
限界を理解すれば、仕事の物理的な負担、精神的な負担を1人で抱え込むリスクを減らすことができる。
・また、仕事中は気持ちを込めて対応しても、仕事が終わったら意識を切り替えて、自分の時間を守ること。
「あのことはまた明日、仕事中に考えればいい」というように、ある程度割り切って考えることが必要になることもある。
また、休日には勉強会や研修会など、自己研鑽にばかり時間を費やすのではなく、趣味や気晴らし、ムダ話の時間も大事にすること。

仕事の私=私の全てではない

・イメージが必ずしも「自分自身」であるわけではない。わがままな顔や冷酷な顔、なまけ者の顔など、色々な側面を持っているのが人間。
・感情労働を選ぶ人の多くは、人間が大好きで、感情が豊かな人。それだけに、いつも笑顔で懸命に人に尽くしてしまい、知らず知らずのうちに疲れを溜めてしまう。
★仕事は長く続けていくことに意味がある。
せっかく選んだ適職をバーンアウトで失わないように、また労働の価値である感情を守るためにも、仕事とプライベートとの時間的な切り分けをし、「プロはこうあらねばならない」という職業上の自分にこだわりすぎないことも必要。
感情労働にやりがいを覚えている人ほど、このことを意識していく必要がある。

どういったサポートが出来るのか

保育士として働く人の中には、新たに務めた園を半年も経たずに退職される方が少なくありません。
我々が転職をサポートする際にも、普通の一般企業では考えられないような数の転職を繰り返し、職務経歴書がひどいことになっているケースは珍しくはありません。

保育士が甘い
ではなく
感情労働とはそれだけ精神的に負担がかかり、他の現場に救いを求める
という考え方が必要なのかもしれません。

紹介先での人間関係などは、どうにも出来ない範囲が多いですが、
例えば、A保育園からB保育園に移る前に、感情労働について改めて学ぶ機会があってもいいように思います。

「何が原因で辞めたのか」

仕事の内容には全く苦はなかった、保護者とも職員とも上手く対応出来ていた。問題は条件面だけだった。
これであればその条件に見合った保育園を紹介すればいいのかもしれませんが、逆に精神的に負荷により転職を決意した人であれば、次の園で同じ思いをしないように上記のようなサポートが外部研修等で行えれば、微々たるものであったとしても力になれるのではないかと思います。